JP2-2 Judgeの7大「資質」②公正性を保つ

「公平性」と「公正性」は通底するところがありますが、「公正性」は「正」という文字が含まれている分、より規範性が強く「正しいこと、不正がないこと」が求められます。

「公正性」を実現するためには「公平性」が保たれねばならず、「公平性」を欠く「公正性」はあり得ません。

一方、「公正性」を欠く「公平性」は理屈上あり得、例えば「誰にでも公平に依怙贔屓する」なら、変な意味で「公平性」が保たれるとも言えます。

もちろん前回のJP1-6は性善説に立った「公平性」を前提にしており、健全で妥当な判断基準としての「公平性」を論じています。

Judgeがクラブオーナー/代表を兼ねている場合を考えると、「公正性」があるかどうかは①自らの審査において「公平性」が保たれているか、②TICA公認クラブオーナー/代表としてTICAのRulesを遵守したショーを開いているか、別のクラブから招かれて審査をする場合には③自分が審査するリング以外のことについてもTICAのRulesに則ったショーであるかチェックしているかーーまで広範囲に及びますが、TICA Asia時代を振り返っても、①②③の全てで「公正性」を保つよう常に最善を尽くすJudgeはごくごくひと握りにとどまるでしょう。

特に③については当該ショーで何か問題が起きても、「単に招かれて審査しているだけ…」という責任回避の言い訳をよく耳にしますが、JP1-1 Judgeの「資質」:大前提①TICAを体現--でも指摘した通り、TICA Judging Programは「417.3 Judging Program参加者は、いついかなる時もTICAの代表であることを自覚し、TICAの代表としての品行を守り、常日頃から立ち居振る舞いに気を付け行動しなければならない」という倫理規定を定めており、その範囲は審査する自分のリング内だけに限定しているわけではありません。

話は変わりますが、会社法における取締役には「相互監視義務」が課せられており、「他の取締役のことは知らない」とか「会社全体のことは分からない」では済まされません。

TICA Judging ProgramでJudgeとしての「善管注意義務」や「相互監視義務」を巡り具体的に明記しているわけではありませんが、Judgeとして一般的に求められる「善管注意義務」、TICAという団体・組織に対する「忠実義務」、Region運営や当該ショー全般における幅広い「相互監視義務」が課せられていると考えるべきであり、そのように考えることができてこそ超一流Judgeと言えます。

別のクラブから招かれて審査することになった場合でも自分が審査を担当するリング内のことだけでなく、当該ショー全体についても常識的な範囲で責任を負い、「私は単にJudgeとして招かれただけですから…」みたいな責任逃れの〝逃げ口上〟は許されません。(※当然、常識的に考えて知ることができない場合は除きます)

「公平性」と「公正性」は「資質」の中でも〝車の両輪〟のようなものであり、どちらかが欠けたり劣っていたりしていいものではありませんが、「公正性」の方がより厳しく重いことが分かっていただけるかと思います。

ですから、「公平性」と「公正性」に欠けるJudgeを生み出すのではなく、「公平性」と「公正性」の両方を保てる「人財」としてのJudgeを育成する必要があるのです。

ちなみに英語で「公正」は「righteousness」、「公平」は「fairness」「impartiality」「equity」であり、超一流Judgeを目指すに当たってはこれらの英単語が意味するところを自分のものにし、常にこれらを脳裏で反芻しながら審査にあたるとともに、自分が審査するリング以外のことについても広くチェック機能を果たしてほしいと思います。

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